では、エキノコックスに関しての基礎知識講座をはじめたいと思います。 ちょいと長文になりますので、心してかかって(大嘘)くださいね。
排出された卵が家畜やネズミ、あるいはヒトの体の中に入ってしまうと、体内で幼虫になってしまいます。
(口から入らないと幼虫になりません)
ネズミの場合は、ネズミのままで犬、キツネ、猫に食べられてしまう場合がありますが、その時一緒にネズミの体内にあるエキノコックスの幼虫を食べてしまった場合、宿主の中でエキノコックスの成虫になります。
家畜・あるいはヒトの中で幼虫になったエキノコックスは成虫になれません。
よって卵を排出する事もありませんので、ヒトからヒトへの感染はありません。
(家畜から家畜へ、家畜からヒトへの感染もありません)
ごく平均的な例を出すと、虫卵が体内に入ってから約10年は無症状で過ぎていきます。
その後エキノコックス症として肝腫大、上腹部不快感、黄疸が出てきます。
そのまま処置しないと約半年で腹水がたまり、やがて死に至ります。
卵は条件によっては1年間生きています。現在の所、卵に効く消毒薬剤などは開発されていません。
が、熱には弱いです。60℃10分間加熱で死滅します。
100℃では即効死滅します。
もともとそのキツネはラッコの保護地のキツネだったのですが、そこがネズミのエキノコックス感染率が50%を越えるような地域で、そのあたりから入ってきたのではないかと言う説が有力だそうです。
そこのエキノコックスは、もとはシベリアやセントローレンス島からはいってきたらしいのです。
では、道東のエキノコックスについてはどこからきたのでしょう?
これは、キツネの自然侵入によるものだそうです。
戦前、花咲港の沖のユルリ島で、キツネの養殖をしていたそうなのですが、戦時中(あるいは戦後)に柵を越えて脱走し、流氷に乗って根室海岸に侵入したと言うのが定説となっています。
(昭和41年4月に漁船が流氷を歩いてわたっているキツネを発見しています)
前にも書いたとおり、卵を出す成虫は、幼虫の寄生したネズミを食べないと寄生できません。
その様な原因となるネズミが道外に出る事が少なかったからではないかと言う事だそうです。
仮にいま幼虫を持っているネズミが道外に出たとしても、そのネズミを犬猫が食べると言う事があまり起こらないのだそうです。
ただし、現在の疫学調査ではエキノコックスの発見されている範囲が急激に増えていますので、道外に出る事も十分に有り得ると言う意見もあります。
道内では昭和12年に小樽市在住の女性(出身が礼文島だった)の肝臓の標本から発見されたのが第1号です。
その後何も処置されないまま、昭和40年に釧路日赤病院・釧路労災病院に
入院中の根室市居住者2名から確認され、更に昭和41年に北大病院(← 北海道大学付属病院の意)で1名発見されています。そのあたりから研究がやっとこさ始められました。
ここまで知識を持っていただければ、充分対処していただけると思います。
もっと詳しい事を知りたいと思われましたら、お近くの保健所に問い合わせていただけると宜しいかと思います。
道内の保健所には北海道が発行している、一般向けのエキノコックスのパンフレットなどが用意してあります。