2010年12月 4日、東北新幹線が新青森駅まで全線開通となり、今のところペースは著しく遅いものの着々と進んでいる新幹線建設です。
2012年 8月25日、長万部駅にて、札幌延伸工事の起工式が行われました。
2016年 3月26日、やっと、新函館北斗駅まで暫定開業しました。
Round 3 は、新函館北斗-札幌間建設の話題を扱います。
新函館北斗-札幌間が更に分割建設されることになれば、Round 4 を書き起こすことになります。
2009年9月の衆議院議員選挙で、自民・公明連立→民主党への政権交代が起きてから、整備新幹線に関しては1991年頃の悪夢が再び蘇っているかの状態です。
民主党政権は元々整備新幹線反対派が多く寄り合っているので、前政権が着工を決めた長万部-札幌間を白紙撤回する、更に財源不足という理由をつけて、着工決定をいたずらに延期するという策に出ています。
今ではもう、民主党(現:民進党)政権は国家を滅ぼす政権ということが知れ渡っており、民主・共産・社民・新党大地以外の政党は、数少ない効果の著しく高い公共事業として、整備新幹線を整備することが国家のためになることを正しく認識している状態です。
その後、幸いにも 2012年12月に衆議院が解散して選挙となり、失われた3年を取り戻すべく・・・という状況です。
在京マスコミは、公共事業反対を唱える必要性が消えたせいか、あからさまに民主党支持にまわっており、以前にも増して在京マスコミの常套手段と化している「間違った情報を意図的に与え、世論のミスリードを企てる」ことが成功しないよう、各種の客観的情報を、逐次書き足して集積することを引き続き主な目的とします。
札幌市は2010年9月の時点で 90万世帯、人口191万人を超えています。
北海道の人口は2000年の時点から減少が長らく続いていますが、札幌都市圏の人口・世帯数は増加が続いています。
何故人口・世帯数を出すのかというと、お国自慢をするためではなく、日本国内でも有数の大都市である、という認識が日本人ですら低いからなのです。
なぜなら、100万都市のままで脳内ソースが止まっている本州人に数多く出会ったから。
100万都市なんて、もうかなり過去の話。札幌市が100万都市になったのは、1970(昭和45)年のことです。
札幌市内の新幹線建設予定沿線は、大部分がすぐそばまで宅地化・市街化しつつあり、ここ数年は新幹線建設敷地の確保が問題になり、一度許可した建築許可を一旦取り消すという事態が何度か起きました。
政治の道具に終始し、建設する時期をいつまでも明確に示さずにだらだらしているからこうなるのです。
このような現状もあるので、新幹線建設を行う当局では「札幌延伸の際、建設は札幌側を先行する」という見解を出したと聞いています。
今のところは、札幌市内における新幹線建設用地は、殆ど確保されています。
このことは、文責者も現地確認しました。 → 札幌市内予定ルート探訪[2009/08/26]
2011/12/20 現在の国土交通省大臣は、前田 武志 なる人物。元建設省の官僚だったそうで。
この大臣が整備新幹線の延伸着工に積極的だと知ったのは、2011年も年末となった12月に入ってから。orz
特に北海道新幹線の場合、札幌延伸実現のチャンスは、事実上最後になる可能性もあります。
ここが北陸新幹線の延伸と事情が異なるところでしょう。北海道新幹線はあらゆる面で過小評価されているので。
少しは現実を知ったのでしょうか。特に北海道方面は、新幹線が無いと広域交通網は破綻する可能性すらあるのです。
しかも流動人口は、居住人口との相関関係はあまりありません。
何度も出てきますが、新千歳~羽田間の航空旅客輸送実績は永らく世界一。これ自体が異常なのです。
樽前山が噴火し、新千歳空港が使えなくなったら、どうするつもりなのでしょう? 新幹線反対派の皆さん。
現状では、他の交通機関で捌けるような状況には程遠いです。
ところで、民主党政権下の国土交通省では、鳩山内閣のときのトンデモ大臣が以下の条件を叩きつけました:
全ての条件を満たさないと着工は認めないというものです。1)は自力ではどうしようもありません。
北海道新幹線の場合、2)3)4)は全く問題無く、5)が最も難題。
今までの経緯から、基本的合意の下地はあるとはいえ、現実味があまり無かったため具体的問題に取り組んでいなかったことと、日教組関係や自治労関係が反対運動していたのが大きいです。
JR北海道の本音は「さっさと札幌延伸して欲しい」です。「(株式市場への)上場目指せる」とまで言っています。
例年、来年度の予算は12月下旬に内定します。
そのため、着工への道筋をつけるには、12月中旬頃までに条件をクリアする必要に迫られます。
北海道庁では最初、(2011年)の11月末までに取り付けたいと考えていたようです。
JRからの並行在来線経営分離同意が必要なのは、南から、以下の15市町です:
北斗市・函館市・七飯町・鹿部町・森町・八雲町・長万部町・黒松内町・共和町・蘭越町・ニセコ町・倶知安町・仁木町・余市町・小樽市。
水面下で北海道庁の説得が始まります。
小樽市の区間は、小樽駅以西が経営分離対象です。
2011/10/31 | 北海道庁、木古内町・北斗市・函館市に対し、江差線バス転換正式表明。激しい反対。見直しを迫られる。 |
2011/11/24 | 北海道庁、木古内町・北斗市・函館市に対し、江差線の鉄路維持表明。 函館市長、経営分離に容認姿勢。しかし、地元商工会等の反対で回答保留。 |
2011/11/30 | 余市町、経営分離に不同意回答。他の市町は保留。 |
2011/12/01 | 小樽市長、経営分離に容認姿勢。正式回答は保留。 |
2011/12/02 | 仁木町、倶知安町、ニセコ町、共和町、黒松内町、長万部町、八雲町、森町、鹿部町、経営分離に同意回答。 |
2011/12/02 | 北海道商工会議所連合会 高向巌会頭、函館商工会議所 松本栄一会頭を訪れ、非公式会談。 |
2011/12/05 | 七飯町、経営分離に同意回答。他の未回答市町は保留。 |
2011/12/12 | 北海道副知事、余市町長と会談。鉄路維持と経営分離に理解を求めたものと思われる。 |
2011/12/12 | 函館市からの具体的な対策の照会に対し、JR北海道は、新函館~函館間の電化を自費で行うことを提案。 北海道庁は鉄道維持を第3セクター、営業運転をJR北海道で行うと回答。 |
2011/12/16 | 小樽市・余市町・蘭越町・北斗市、経営分離に同意回答。函館市は保留。(この時点で函館市以外が同意) |
2011/12/18 | 休日返上で、北海道知事、函館市長と会談。支援策等を口頭で伝えた模様。 |
2011/12/21 | 函館市、やっと経営分離に同意回答。15市町全ての同意が出揃う。 |
反対が激しかったのは、余市町と函館市。それなりに理由があります。
まず、余市町。
直前の町長選挙で、「JRの経営分離反対・阻止」を公約に掲げて町長になったのが、現職(2011/12/21現在) の町長で、更に町民の6割弱にあたる1万1千人から「経営分離反対」の署名も集まっていました。
町長は、数回タウンミーティングを行って、現実を直視した見解を、ということを求めた結果、苦渋の同意ということです。
次に、函館市。
2004年に新函館駅を現在の渡島大野駅付近に設置することを容認する際、新函館駅から現在の函館駅へ新幹線車両を乗り入れるように北海道庁に求め、了解をとりつけたものの、技術的にも費用的にも困難なことから、翌年、北海道庁は「それは無理だ」と反故にせざるを得ませんでした。
これが不信感の元凶になり、函館商工会議所などの頑な態度となったようです。
在来線の JR からの経営分離も函館市民には、かねてからの不信感から「札幌のために鉄道を身売りするのか?」という空気があり、函館市に一定の配慮が欠かせなかった状況であったのも否めません。
あとは、着工指示がいつ出るのか、予算配分はどうなるのか、フル規格かスーパー特急か、工期はどうなるか、という部分に関心の焦点が移っていきますが、このあたりは今日(2011/12/21) 時点では公には見えてきません。
札幌延伸の着工認可のニュースを知り得た当日は札幌を離れており、NHK第一ラジオのニュースしか情報源がなく、各社マスゴミがどのように伝えたかの比較が出来ませんでした。
NHKは東京の物知らず記者か、左翼洗脳されている記者が書き下ろしたのが明らかなものでした。
『巨大な費用がかかる整備新幹線の建設は、今後の財源支出のあり方が問われる』
これを連呼していました。
前回のように政府を叩くことは出来ない何らかの事情があるらしく、精一杯の抵抗のようなものが滲み出ていた感があります。
工期は「北海道新幹線だけ」が24年です。認めさせるには、この条件を呑むしかなかった状況もあります。
が、工期の長さはあまり現実的ではありません。
北海道新幹線は延伸部分が、1兆800億円から1兆6700億円に予算が上がっていました。
これは、主に建設資材の世界的な高騰によるものです。
いつまでもだらだらしている上に無駄に工期を伸ばすから、余計なカネがかかるようになるのです。
本当に巨大な費用と言えるものか? はっきりいって「NO」です。
羽田空港のD滑走路新設総工費は結果的に約8000億円余りです。第二東名高速の総工費は約9兆1000億円です。
整備新幹線を未だに批判するなら、これらをまず直視していただきたい。
もし、北海道新幹線の札幌延伸が1980年代に完了していたならば、羽田空港へ8000億円つぎ込む必要性は無かった可能性があります。
筆者に言わせれば、こういう国土交通の無知無策こそが無駄使いの温床だと考えます。
更に、30年以上前に設定した財源スキームを現実的な状況に合わせて変えることをしないからこうなる訳です。
今後は、この工期を大幅短縮する方向に焦点が行くと思います。
国土交通省提供の概要資料を眺めた限り、フル規格での建設認可です。
ひとまず、アホなことにならなくて良かったですが、工期の大幅短縮が目下の課題になりました。
延伸区間中、トンネルが76%を占めます。
最も長大なトンネルは、(仮称)新函館~新八雲間の「渡島トンネル」で、26.5km 32.6km余りになります。
(何度か設計変更があり、渡島トンネルの長さが伸びました [2016/12/11] )
また、20km 前後のトンネルが何本か建設されることになります。
新小樽(現在の小樽市天神2丁目付近に建設予定)から札幌に向かって、一番最後のトンネルは「手稲札樽トンネル」で、18.8km 26.2km 余りの長さです。
(何と!! 札幌市街地区間の殆どがトンネルに変更され、手稲トンネルの長さが伸びました [2017/06/30] )
また、地形上の都合で、このトンネルは札幌側の勾配が35‰になる予定で、延伸区間で最も急勾配になります。
開業すると、札幌~(仮称)新函館は1時間弱、札幌~新青森は2時間弱で移動できるはずです。
東京までは、4時間半~5時間といったところが想定されます。
(5時間1分と報道したマスゴミがあるようだが、それは最高速度 260km/h での値だと思われます)
また、最小曲線半径が 4,000mとされており、300km/h 超の走行は可能です。
現在は、走行時の騒音等をクリアすることで、360km/h の営業運転に向けて技術的課題に対応している段階です。
2012年 8月25日(土曜)、JR長万部駅前の特設会場にて、札幌延伸工事の起工式が行われました。
記事内容は論調にさほど差異無かったのですが、今回は見出しに注目してみました。
〔NHK〕 北海道新幹線起工式 札幌まで延伸
〔毎日新聞〕 北海道新幹線:着工、200人が安全祈願
〔日本経済新聞〕 北海道新幹線、新函館―札幌間の起工式
〔北海道新聞〕 道新幹線・新函館―札幌 長万部で起工式 知事ら200人安全祈願
〔読売新聞〕 新幹線札幌延伸へ第一歩 長万部で起工式
〔朝日新聞〕 北海道新幹線、長万部町で起工式 1.6兆円
〔時事通信〕 新函館-札幌間で起工式=北海道新幹線、開業35年ごろ
〔日テレNEWS 24〕北海道新幹線の起工式 札幌まで延伸(北海道)
〔TBS News i〕 北海道新幹線、札幌-新函館間の起工式
〔苫小牧民報〕 長万部で起工式 北海道新幹線 新函館―札幌
〔室蘭民報〕 北海道新幹線札幌延伸、オール胆振で課題の本格協議
批判思考から抜け出せない朝日新聞。わざわざ '1.6兆円' と書いて批判を忘れない。
一部ニュースサイトでは、ニュースへコメントできるのですが、そこをずっと眺めていると、ここでも反対派・慎重派・容認派・賛成派が入り乱れ、コメント応酬なんかも散見されます。
どこまでも反対派は感情的であり、北海道蔑視や差別まであります。もう何が言いたいのか判りません。
室蘭民報は危機感を表明しています。と、いうのは、
現在の札幌-函館間の特急列車は東室蘭を経由するのですが、
新幹線の札幌延伸によって、函館方面の特急列車が廃止になることが見込まれるためです。
長万部で乗り換えすることになります。つまり、新たに発生するであろう移動ハンディにどう対応するかということになります。
工期は 24年ほどですが、当然のことながら大幅短縮が既に模索されています。
延伸区間の7割強がトンネルなので、トンネル掘削技術の進歩がそのまま工期短縮に繋がるわけです。
また、工期短縮は総工費の縮減にもつながります。工期10年以内で開通させたいものです。
2012(平成24)年12月16日に衆議院解散による衆議院議員選挙があったため、
例年であれば年末に内示があるのですが、今回は選挙による政権交代(民主党 → 自民党)の影響で、この時期の平成25年度予算閣議決定を受けての事実上の内示となりました。
今回は、延伸区間に 60 億円が配分されています。
早速、5km超のトンネル工事が予定されており、予算計上されていると思われますが、大半が土木工事のための測量や地質・現況調査などの準備作業に充てられます。
また、北陸新幹線の延伸区間(金沢~敦賀)には、80億円の配分となっています。
つまり、北陸新幹線側に傾斜配分された状況であり、工期短縮の考慮は為されなかった模様です。
昨年の札幌延伸認可時に言われていたことですが、北海道新幹線の場合は元々、(仮称)新函館開業を待って本格工事という算段らしく、(仮称)新函館開業までは、あまり工事が進まない可能性があります。
しかし、札幌市内区間の手稲区の区間(約 1km) は、ルート決定時(1998年)には空き地だった場所が、現在は宅地化しはじめており、現状では立ち退きなどの保証をしなければならない状態です。
正直なところ早急な土地収用をやらないと、大きなトラブルが懸念されます。
2013/06/04、北海道庁の担当部署(北海道総合政策部 交通政策局新幹線推進室)が現時点で予測し得る経済波及効果を発表しました。
当日と翌日、道内メディアが何度も取り上げていました。
それによると、事業費 1兆5500億円(用地買収費用を除く)に対し、約1.7倍にあたる2兆5800億円余りの経済波及効果と、
19万7000人相当の雇用創出効果があるとしています。これらは、建設時に見込まれるもので、建設が終われば無に帰するわけです。
札幌延伸開業後は、北海道全体で年間900億円程度かそれ以上の経済波及効果があり、それは工期短縮をすることでその効果は大きくなる、としています。
工期24年(2035年開業)で 964億円/年、工期20年(2031年開業)で 1,039億円/年、工期15年(2026年開業)で 1,086億円/年
と試算され、雇用創出効果も 6,600人~7,400人程度としています。
札幌市自体の経済波及効果は、北海道全体の7割としています。
これは、筆者のうろ覚えで恐縮ですが、現状の北海道のGDP構造と割合は変わりません。
また、札幌延伸開業後は、道外から年間42.4万人の交流人口増が見込まれ、札幌圏や道南圏以外にもその波及効果があるとしています。
こんな感じです:
純増交流人口(万人) | 札幌市 | 道央圏 (札幌市以外) | 道南 | 道北 | 網走/北見/紋別 | 十勝 | 釧路/根室 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
33.3 | 3.0 | 15.7 | 13.5 | 4.4 | 2.9 | 4.1 |
道北圏とは、いわゆる旭川・富良野・稚内ですが、この地域は現状でも札幌 → 道北圏という移動動線を描きやすい故と見られます。
(そのため、純増合計が 42.4万人以上になっている)
十勝は特に道外からの移動動線が女満別・釧路⇔十勝という形態が多いので、波及効果は小さいと見るのは自然な形ですが、
これは逆にいうと観光需要等が小さいという暗示でもあり、何らかの対策が必要ではないかと考えられます。
更に、工期短縮は、経済効果の面から人口減緩和にかなり寄与するものと思われます。
俗にいう「ストロー効果」は、福岡の事例から見ても影響はほぼ皆無と思われます。
(おそらく、この予測もそこは考慮には入っていないと思われます)
ひとつだけ、敢えて問題を指摘するとしたら、この資料は札幌延伸推進ありきで作られている部分があるため、慎重派の説得にはやや難があることも否めないのです。
工期短縮が札幌延伸開業効果を高めることは、このような資料が無くても自明ですが、国策として是非検討して欲しいものです。
本日(2013/12/24)、来年度の予算案が閣議決定し、同時に整備新幹線の区間別配分も公表されました。
また、同じ日に北海道知事と札幌市長のトップ会談(行政懇談会)が行われ、札幌市が北海道負担分の5割負担を了承したというのです。
なぜこの地元負担分が注目されたのかというと、この負担率の高さにあります。
5割負担というのは、全国の整備新幹線の地元負担割合としては、いままでの事例からみて最も割高であったことです。
札幌市の区間は各種の情報によると、概ね 2,100億円の工事・整備費が見込まれており、
整備新幹線の費用分担スキームでは、北海道の負担は、その3分の1の700億円(残り3分の2は国が負担)、
地元自治体負担分は北海道から沿線自治体に一部を求めることが出来ることになっていますが、5割ということで、350億円程度という計算になります。
正直、350億円をあの左巻き市長が了承するとも思えなかったのですが、案外あっさりと了承したので、ちょっと驚いています。
まぁ、新幹線の札幌延伸で最大の受益者が札幌です。これが判らないほどアホではなかったというところでしょうか。
当たり前の判断を、当たり前にやってくれたことに安堵しています。
最大の受益者は札幌であること以外に、
・固定資産税の収入が増えること(「鉄道高架」という構造物に固定資産税がかかる)
・北海道の財政が以前として厳しい状態であること(横路・堀といった左巻き知事が無駄に使い込んだ)
・350億円といっても、工期は複数年度に亘るので、実質は年間数十億円程度。
という状況と、
この額は札幌市の財政規模から言えば、0.1% とか 0.2% とかその程度のものというもので、止む無しという心理は働いたのでしょう。
記事を追記するのは、約3年ぶりになります。
文責者の個人的な環境の変化や、本業の多忙などで殆ど時間が取れなかったのです。今年(2016年)の3月26日に、やっと新函館北斗まで開業しました。
黄金週間に新函館北斗駅などを見て来たりして、一応何かと追いかけてはいます。
この3年間、JR北海道は不祥事続きで、社会的信用がかなり揺らいでいる状態です。
一見、コストダウンしすぎた結果のように見えますが、文責者が以前どこかで指摘したように、技術の伝承が上手くできなかったのが大きいと見ています。
こんなJR北海道に新幹線運行を任せるなんぞ、危険なのでは・・・という声も聞こえたほどです。
国鉄を地域単位で分割民営化する時点で、JR北海道が将来抱える苦境を軽視し、さっさと稼げる鉄道を敷設しなかった政府の責任は重いです。
歴代の政府をそうさせた新幹線反対派の愚行も大きいですが・・・
公共事業に無駄なものはそう多くは無いものです。無駄というよりは優先順位付けが頓珍漢なことが問題でしょう。
そのあたり、混同している諸氏、案外多いように思います。
実際のところ、噂では聞いていた内容ですが、本当に「新幹線ホームを現札幌駅に設置は困難」と言い出したのにはさすがに呆れました。
開業1ヶ月を迎えた 4月27日のことです。ええ、今まで聞いていた話は何だったのだ??? というのが第一印象。
ま、こんなところです。
これには鉄道運輸機構も札幌市も北海道庁も「寝耳に水」状態だったようで、一斉に猛反発した模様。
素人目で見ても、「列車の発着に余裕がない」とはちょっと考えにくいです。
発着ホームに方路別に区分けなどのきちんとした役割分担が無い上に、無駄に停車時間が長い(20分以上のものがかなりある)など、効率の悪さを感じるほどです。
案の定、鉄道運輸機構も札幌市も「まだまだ工夫の余地あるだろが!」と一蹴した模様です。
何はともあれ、鉄道運輸機構・北海道庁・札幌市・JR北海道 の4者協議が始まりました。
先ずは、建設認可の際に予定していた札幌駅のホーム配置。現状で、10のホームがあります。
ですが、1988(昭和63)年に完了した鉄道高架化の時に、最初から11番線を設けてあるのです。
ただ、駅舎を北に増設し、11番ホームを新設する必要があります。これを各種メディアにおいて、「認可案」と称しています。
次に、「西側案」。JR北海道側で最初に一押ししてきた「西側案」です。
確かにスペースはあるのですが、在来線ホームまでは少なくとも 300m 程歩かされることになります。
鉄道運輸機構・札幌市・北海道庁から猛反発を受けたので、幸いにもボツとなりました。
JR北海道が反発受けている時にどさくさに出てきた「地下案」。どうやら、地元の状況に無知な国会議員連中が、
「土地取得が難航するだろうから、いっそのこと札幌駅直下まで地下でいいでしょ」
的な、安直な発想で一押しした模様。余計にカネかかる羽目になるのと、工期の問題でこれも幸いにもボツとなりました。
土地取得が問題になりそうなのは、手稲トンネル出口付近の1km程度の区間(地下トンネル化する方向になっている)と、発寒中央駅付近(駅舎は全面的に建て替え要)くらいです。
土地収用を先行するとか、さっさと建設に向けた準備をすることが解決の早道です。
JR北海道が次に一押ししてきたのがこの「0番線」案。札幌駅の駅舎に隣接して「大丸百貨店」があります。
この案は、既存の建物を一部占有する(大丸百貨店の敷地の一部を新幹線0番ホームにする)ため、
現実的ではない(売り場面積が減る大丸百貨店が承諾する訳がない)ということで、結局ボツになった模様。
#既存建築物の支柱をそのまま残すので、「ぶち抜く」形になります。
鉄道運輸機構・北海道庁・札幌市が納得するはずもなく、JR北海道としては、苦肉の策として出してきたのが、この「東側案」(「大東案」とも称す)。
既設のJRタワーの立体駐車場を一部解体する必要があるものの、在来線ホームへは 100m前後の距離になるので、一応現状では選択肢として生き残っています。
#これも既存建築物の支柱をそのまま残すので、「ぶち抜く」形になります。
方向性としては、「認可案」と「東側案」の折衷となりそうな感じですが、JR北海道の体たらくぶりが目立ち、まだかなり流動的です。
年末までには、鉄道運輸機構とJR北海道との協議を経て結論出す(そろそろだと思うのですが・・・)ようです。
ただ、これでも地下鉄南北線との乗り換えはかなり遠い。ただでさえJR ⇔ 地下鉄乗り換えには時間かかりますが。。
※ 地図は、OpenstreetMAP を使用しています。
2016年11月18日、JR北海道は「自力では維持困難な線区」をプレスリリースとして公表しました。
半分程度の路線を「自力では維持困難」としている内容です。
この話題は「経営」という観点で欠かせない話なのですが、ブログにするには重すぎる話題だし、整備新幹線の話題にはそぐわない部分があり、掲載場所に悩んでいたのですが、取り敢えずここに記すことにしました。
(それゆえ、後日掲載場所を移動するかもしれません)
以下のように、少なくとも北海道の東半分は鉄道そのものが消えるかもしれない事態としています。
Round 1 の最後で記述しましたが、「札幌近郊を除いて、鉄道が無くなるかもしれない」が現実の話として俎上してきました。
このうち、日高線の 鵡川 ~ 様似間は、本日「JR北海道では廃止の方向で地元自治体に通知した」としています。
沿線自治体は反発していますが、「鉄道は維持しろ。だけど、路線の維持費は1円も出さない」の一点張りでは、話になりません。
北海道庁か政府が積極的にかかわるべきですが、今のところ無関心。経営的には足を引っ張る「安全対策」しかモノを言いません。
日本とロシアで北方領土返還交渉していますが、膠着状態になっているのとよく似た状況です。
はっきりいって、日本の鉄道政策が国鉄のトラウマにとらわれているにすぎません。
古くから鉄道がある欧州でも地方ローカル鉄道経営は赤字のところが殆どのようですが、現実として、社会福祉政策上欠かせない交通インフラなので、政府や地方自治体が路線保守を行い、鉄道会社は列車を運行するだけ、という『上下分離方式』がごく普通に実施されています。
日本は欧州のそれと比べて、沿線人口も乗車人員も多いくらいだ、という意見も時折見かけます。
『上下分離方式』とは、「路線保守・設備維持」と「列車の運行」をそれぞれ別会社・別組織で行うものです。
日本では、青森県と岩手県で『上下分離方式』を採用している例しか見当たらないようです。
これは、道路では普通ですね?
バス会社や運送会社が自費で道路(いわゆる「公道」)の舗装工事や補修工事、拡幅工事やっているのを見たことがありますか?
あれば教えてください。
国鉄を分割民営化するきっかけとなった要因のひとつに、「時代の変化に対応した施策ができなかった」と、現在の鉄道運輸機構のWebサイトには、国鉄の問題点として挙げられています。
このままではまた同じ失敗をしそうですね。
道路事業は最初から「上下分離方式」ですが、鉄道でこれを真っ向から否定するのは現在の社会情勢に全く合わないのです。
数ある有識者の意見を眺めると、「自治体や政府の抜本的意識改革が不可欠」という意見が最も多いように散見されます。
それでは、どの程度赤字なのでしょう。これも一応JR北海道のプレスリリース(2016/11/18) で掲載しています。
最も右側の列の数字が100未満なら黒字、100を超えていたら赤字です。数字が大きいほど「稼げない」ことを示します。
赤字が酷いことを意味するわけではないことに注意しましょう。これに騙されたら「数字のマジック」に騙されるのです。
全路線赤字のようです。これは安全対策を長年怠ってきたツケで、今この時期に安全対策の数々をやっているという面もありますね。
幹線と言われる函館本線 長万部 〜 函館の赤字額が最も多いです。
営業係数は 206 で、あまり表には出さないものの、JR貨物に物申したいのも何となく理解できます。
国鉄の赤字額の半分近くが実は東海道線であった、という状況に似たようなものがあります。
だから、札幌延伸はJR北海道の経営を少しでも楽にするためにも、あと5年は最低でも前倒しすべき話です。
遅すぎるからこうなったのは目に見えています。
それと同時に、上下分離方式への速やかな移行(恐らく、政府の支援の基に北海道庁が保線の主体となるのが自然)と、定期券運賃の15%程度の値上げ、これでJR北海道の経営は黒字にできそうです。
※ 環境アセス記載のトンネル名と鉄道・運輸機構が発注するトンネル名で変更があるようです。
第一渡島トンネル → 村山トンネル
第二渡島トンネル・桧山トンネル → 「渡島トンネル」に一本化
更に 渡島トンネル・村山トンネル → 「渡島トンネル」に一本化 [2016/07/22]
立岩トンネル・第一山崎トンネル・第二山崎トンネル・第一黒岩トンネル・第二黒岩トンネル → 「立岩トンネル」に一本化
手稲トンネル(18,740m) を延伸 → 「札樽トンネル」(26,230m)に名称変更 [2017/06/30]
※ 札幌延伸に関連する調査・建設等の履歴は、以下を参照ください。
2012年 2013年 2014年
2015年 2016年 2017年
2018年 2019年
2011/12/21 | 政府は、整備新幹線3区間 (北海道新幹線 新函館~札幌・北陸新幹線 金沢~敦賀・九州新幹線長崎ルート 諫早~長崎) の2012年度建設予算に90億円計上 |
2012/06/29 | 国土交通省は、整備新幹線3区間 (北海道新幹線 新函館~札幌・北陸新幹線 金沢~敦賀・九州新幹線長崎ルート 諫早~長崎) の延伸着工を認可 |
2012/07/30 | 北海道新幹線建設促進期成会 主催による、北海道新幹線札幌延伸を祝う道民の集い記念講演会開催 |
2012/08/25 | 北海道新幹線 札幌延伸(新函館~札幌)起工式 〔長万部町〕 |
2012/12/21 | 〔入札公告〕村山トンネル[5,265m]、他[路盤 115m](北斗市 149k78-155k16間/工期は 95ヶ月間) 一般競争入札(政府調達協定対象工事) 2013/03/07 に開札され、岩田地崎・熊谷・不動テトラ・相互JV が 総工費106億円余りで落札。 ↑ 札幌延伸区間で初のトンネル工事。2020年末開通で工程を組んでいる模様。 |
2013/01/29 | 国土交通省は、平成25年度予算閣議決定を受け、 北海道新幹線建設事業費 新青森~(仮称)新函館間に 1,000億円、(仮称)新函館~札幌間に、60億円の配分を計上。 |
2013/03/21 | JR北海道は、函館線五稜郭・渡島大野間電化工事起工式を、来る4月20日(土) AM 11:00 より、七飯駅付近で行うと発表。 |
2013/04/20 | JR北海道 函館線 七飯駅付近にて、五稜郭~渡島大野間電化工事起工式。 |
2013/06/15 | 新函館(仮称)駅建築工事安全祈願祭・立柱式 |
2013/12/24 | 国土交通省は、平成26年度予算閣議決定を受け、 北海道新幹線建設事業費 新青森~(仮称)新函館間に 524億円、(仮称)新函館~札幌間に、120億円の配分を計上。 |
2014/04/08 | 北海道新幹線 倶知安鉄道建設所 開所(2014/04/01 付け) |
2014/04/14 | 北海道新幹線 八雲鉄道建設所 開所(2014/04/01 付け) |
2015/01/14 | 北海道新幹線 札幌延伸開業を5年前倒し正式決定(2035年度→2030年度)。 北海道新幹線建設事業費 新青森~新函館北斗間に 500億円、新函館北斗~札幌間に、200億円の配分を計上。 |
2015/12/22 | 北海道新幹線建設事業費 新青森~新函館北斗間に 80億円(前年比 -84%)、新函館北斗~札幌間に、340億円(前年比170%)の配分を計上。 新青森~新函館北斗間は地元の調整が完了次第、留保分追加計上。 |
2016/03/26 | いよいよ営業運転(新函館北斗~新青森間)開始。 新函館北斗行き1番列車が東京駅発 06:32 はやぶさ1号、東京行き1番列車が新函館北斗駅発 06:35 はやぶさ10号。 |
2016/04/27 | JR北海道、「札幌駅の新幹線ホームを西へ300mくらい移動させたい」と突如発表。 鉄道運輸機構・札幌市・北海道庁は猛反発。(この発表には一般庶民も呆れ気味・・) |
2016/07/22 | 鉄道運輸機構は、 ・治山対策上の理由から、渡島トンネル・村山トンネルを一体化し、全長 32,675m の渡島トンネルとする ・トンネル掘削時の水圧の問題や水利用の影響を抑えるため、羊蹄トンネルの勾配設計を地表に近い位置に変更 ・地元要望を踏まえ、倶知安駅を地平駅から高架駅に変更する と発表。 |
2016/12/22 | 北海道新幹線建設事業費 新青森~新函館北斗間に 70億円(前年比 -12.5%)、新函館北斗~札幌間に、360億円(前年比105%) の配分を計上。 北陸新幹線延伸区間(1,340億円)と九州新幹線長崎ルート(800億円)にあからさまな傾斜配分をされた形。 |
2017/06/30 | 鉄道運輸機構は、 ・札幌市街地区間の 7.4km 区間を高架からトンネルに変更し、全長 26,230m の札樽トンネルにする(西10丁目付近で地上に出る) ・地元要望を踏まえ、長万部駅前後の 2.8km 区間を地平構造から高架構造へ変更(長万部駅の高架駅化)する と発表。 |